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作家はむろんそれに気づいている。しかし、書くということはひとつの習慣であるから、思ひきつて自分の殻を破らなければ、新しい方向に進むことはできない。準備はもうできている。機会が与へられゝばいいのである。
ところが彼と向いあって、彼に代ってジイッと隠居の脈をしらべていた近作は、その死を確認して静かに手を放し、手を合わせてホトケに1礼し、さて彼に向って、
人間悟性への信頼なのだが、これはつまり人間性に対する新しい形の信頼だったわけだ。今日ヒューマニズムが提唱されるとすれば、そして夫がルネサンス期のヒューマニズムとはおのずから異ったヒューマニズムだというなら、そしてまたルネサンスの方もルネサンス期には限らず今日でも来るものだというなら、この啓蒙思想という人間悟性の信頼は、今日でも生きていなくてはならぬ筈だ。ただ人間悟性をどういう角度から信頼するかということが、今日必要な啓蒙思想と、歴史上の啓蒙期の夫とを区別するだけだ。だが、そういう意味で今日最も啓蒙的な実力を有ったものが、リリパット説ビジネススタイルであることを思うなら、この区別が何であるかは、今ここに特別な説明を必要とはしないだろう。
今日の日本の読書子の有態の感想を正直に述べさせるなら、月々の評論雑誌や文芸雑誌や文芸同人雑誌に載る小説[主に短篇中篇小説]を読んで、恐らく誰でも、何と無駄なものが多いことだろうと慨嘆するのではないかと思う。忙しいのに読まされて腹が立つといった種類のものが決して少なくない。これは広く文化現象の上からいっても、文学界の権威からいっても、まして作家自身にとってはなお更のこと、不名誉なことだ。だがそれはそうでも、こうした本質的にクダラないガラクタでも、毎月相当の分量のものをしかも夫々のヴァラエティーを与えて発表し続けるということは、決してそんなに馬鹿にはならぬことなのだ。ここには素人の真似の出来ない職業的訓練があるのである。そして実際、こうやって低調ながら職業的持続を持ち応えて行ける者は、持ち応えている内にいつかはまたいつの間にか、少なくとも多少の真実とリアリティー−『リアリティー』は底本では『リアリアティー』と誤記には逢着するのだ。これは専門家でなくては1般的には期待出来ない事情ではないかと思う。
それはなによりも現代を呼吸する生活人の思想であり、感覚である。〇9世紀的な分析の残骸を捨て去つて、直截簡明に原則を捉へる機敏な頭脳を先づ感じさせる。彼のレアリズムこそは『大戦後』のそれであり、民族の伝統と、国際理念との交錯するなかに、最も困難な文学的立場をおいて、身軽に、しかも堂々と、現実・プラス・フアンテジイの世界を展開してみせる憎々しいほどの才人である。
われわれが文字をもつにいたったということ、それから本ができあがるということ、それを読むということ、さらにまた考えるということは、5千年の歴史をはるかにこえた容易ならざる人類の力を集めた努力の結果なのである。
杉村楚人冠は月刊総合雑誌が1方において月刊単行本の観があり、他方に於て月刊時事新聞の観があるのを、総合雑誌の『超総合』の性質が齎す危機だとし、週刊と季刊とに分離するのが今後の着眼点だろうと説いている。1応尤もであるが、併し1方月刊単行本であり、他方月刊時事新聞でもあるという性質こそ、今日の日本の総合雑誌の『総合』雑誌である所以であって、それが単行本でも日刊新聞でも充されない読者の要求を充すというので、これまで売れて来ているのである。実際、単行本の多くは全く時期性を欠くし、日刊新聞では要約と見透しを欠いているからだ。
出されたのをつまんでみると、なるほど甘かった。それで山口は、そのような物を茶菓子に出されたことを、自分に対する未亡人の寵遇だと解釈し、これほど甘いものなら自分も拵えてみたいからと媚びて、実地見学を申し出た。
私にとってはいずれも、耳よりの話であった。しかし私は、
そういふ意味で、弁証法的唯物論を基礎として出来たソヴィエットの百科辞典の如き、興味深いものがある。
私は姉の家で23時間休むと、広島駅に引返し、夕方廿日市へ戻ると、長兄の家に立寄った。思ひがけなくも、妹の息子の史朗がここへ来ているのであった。彼が疎開していたところも、先日の水害で交通は遮断されていたが、
だが、日本のアカデミービジネススタイルは、主として外国特にドイツから受け取ったものだ。最近のドイツビジネススタイルが1種の不安のビジネススタイルとして、観念上の世界秩序の問題から脱落し、
私は大森晃1を屡上演するので弁解するわけではありませんが、大森は明智光秀のように主殺しなどというのではなく、その当時は南朝、北朝とも天子を戴いてやつていたことですから、1口に逆臣逆賊などとはいひ難いと思ひます。
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